医事法

産科医療における無過失補償制度について(5/5)

2 論点 (1)補償の目的 ア 補償と原因究明 上記のような構造を有する産科医療補償制度にはいかなる論点が存在するかを検討する。 本制度は、(1)分娩により重度の脳性麻痺となった児及びその家族に対して速やかに補償するとともに、(2)脳性麻痺の原因…

産科医療における無過失補償制度について(4/5)

産科医療における無過失補償制度の検討 1 産科医療補償制度 (1) 制度創設の経緯 被害者救済という観点からすれば、全医療を対象として無過失補償制度を実施することが望まれるが、補償対象を拡大すれば財源上の限界という問題に直面する。そこで、緊急度…

産科医療における無過失補償制度について(3/5)

各国の制度 1 概論 (1) 類型 補償制度の類型としては、以下のような3種類があるといわれる。 第一に、社会保障制度が挙げられる。この制度の下においては、民事責任との関係は断ち切られている。すなわち、資金の拠出者は、侵害者または潜在的侵害者とは…

産科医療における無過失補償制度について(2/5)

2 社会保障法・保険法 (1)概論 ア 保険の定義 保険を定義した法規定は存在しないが、一般に保険とは、同様の危険に晒された多数の経済主体が金銭を拠出して共同の資金備蓄を形成し、各経済主体が現に経済的不利益を被ったときにそこから支払いを受けると…

産科医療における無過失補償制度について(1/5)

はじめに 本稿の目的は、産科医療における無過失補償制度を検討することである。 日本の周産期医療は、世界的にみても低い新生児死亡率や周産期死亡率を達成している。 ところが、産科医不足、産科医療提供体制の問題点がなどが指摘されて久しく、出産医療を…